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ムスリムやヴィーガン、ベジタリアン観光客に対する飲食業の対応

外部環境


 今回は食事制限のある観光客への対応について書きたいと思います。一つ目は、イスラーム教徒(ムスリム)対応です。世界の人口80億人に対し、イスラム教信者(ムスリム)は16億人で、2030年にはキリスト教徒数に並び追い抜くといわれています。近年、 世界第4位の人口であり、ムスリム人口が最も多いインドネシア(人口2億7千万人で、その9割がムスリム)やマレーシアの観光客が増えています。2023年1-11月のインドネシア、マレーシアからの旅行者は70万人となっており、政府は、2015年には「ムスリムおもてなしガイドブック」、2018年には「訪日ムスリム旅行者対応のためのアクション・プラン」を作成し、ムスリム観光客が日本を観光先として選択し、旅行を楽しんでもらえるように取り組みを示してきました。「インドネシアからの観光客が日本を旅行する前に期待したこと」の調査では、7割以上が「日本食を食べること」をあげています。メディアでも取り上げられることが多い「日本食」は、いわゆる「和食」ではなく、ラーメン、カレー、どんぶりものなど、気軽に食するものを含んでいます。筆者はインドネシアで17年の駐在を経験しており、その肌感覚で、日本の飲食業でどのような対応が必要であるのかを説明していきたいと思います。


 もう一つが最近耳にすることが多くなった「ヴィーガン」です。「ベジタリアン」と似ていますが、定義としては完全菜食主義者と訳されるように、ベジタリアンの中でもより厳しく、食生活では魚、肉、卵、乳製品などを避け、衣服や日用品でも革製品、シルク、ウールなどの動物由来の素材も避けます。ビーガンを含めたベジタリアンは世界で増え続けており、すでに6億人を超え、その8割がアジア人です。宗教的な影響もありますが、ベジタリアン人口はアジアではインド、台湾、シンガポールの順で、アジア以外では、ドイツ、カナダ、イタリアの順です。


 こちらも政府が対応を促しており、2020年に「飲食事業者等におけるベジタリアン、ヴィーガン対応ガイド」を提供し、観光客への対応を促しています。この中でベジタリアン、ヴィーガンを下の通り説明しています。


ベジタリアン等の背景と分類
国土交通省 観光庁「飲食事業者等におけるベジタリアン、ヴィーガン対応ガイド」2020年より

 これら2つのインバウンド需要について、今後とも大幅な増加を見込んでおり、政府も積極的な対応を促しています。当法人においても、飲食業に関わる中小事業者様から相談を頂くケースが多く、大きな投資なしに対応ができる方法を提案しています。

 

 

ムスリムへの対応

 

 イスラーム教は、礼拝、断食、メッカ巡礼などの義務のほかに、偶像崇拝、利子をとることなど禁止行為があります。また、この禁止行為の中に豚肉など食事に対する制限、食べてはいけないものがあります。禁じられている行為を「ハラーム」と呼び、それ以外は「ハラール」といいます。ハラームなのかハラールなのか疑わしいものは避けたほうが良いとされていますが、これらの判断は本人がするべきものとなっています。食事においても食べるか否かの判断は本人がします。食事の提供に当たっては、その判断ができるように情報を提供することが重要で、必ずしもハラール認証の食事を提供することを求められていません。


 信者の国や地方などにより、様々な判断がされているのが事実ですが、このような考え方で食事を提供することも可能と考えられます(もちろんハラール認証取得メニューの提供がベストですが、中小企業にとっては人的、資金的にもなかなか高い壁です)。



禁止されていないものは個人で判断
筆者作成

 ムスリムへの食事提供において、具体的取組みとしては、メニューに使用食材や調味料を示し、個人の判断をしやすくすることが考えられます。また、ハラーム禁止食材を調理した調理器具などをハラール調理に共用することを禁止していることは、中小企業にとって設備面で厳しい問題です。この問題の回避は、豚を使うメニューをはじめから置かないこと、アルコール提供については、瓶や缶などで提供する方法で、カウンターなど目立つところにアルコール類を置かないこと、コップなど食器を共用しないことが必要です。ムスリムは、調味料においても、アルコールや動物性油を含むものを避けることも多く、塩、砂糖などで調理時の味付けはシンプルにして、しょうゆ、ケチャップなどハラール認証のある市販の卓上調味料を揃えるのも一つの方法です。

 

ヴィーガンやベジタリアンへの対応

 

 ヴィーガンやベジタリアンへの対応ですが、これも日本においては誤解が多いようで、「自然素材」とか「有機農法」とか、ヘルスケアや健康維持に対する対応が多いように感じます。特にヴィーガン対策には、動物性食材を使わないことが重要です。


 下図に示すアンケートでも関係団体や公的機関による認証が必要と考えているのは、ベジタリアンで17%であるが、使用する食材がメニューに明記されていることが32%に達しており、認証よりも食材等をメニューに示すことが重要といえます。


 さらには、日本には古来から精進料理などのいわばベジタリアン料理が存在します。これらをうまくアレンジしながら外国人に対応したメニュー開発も可能と考えています。それらのメニューに使用食材を明記することで対応が可能と考えています。




国土交通省 観光庁「飲食事業者等におけるベジタリアン、ヴィーガン対応ガイド」2020年より

新しい顧客層の獲得として

 

 これまで、ムスリムとヴィーガン、ベジタリアンへの食事提供について説明しましたが、両顧客ともメニューに食材や調味料を示すことで対応ができそうです。その際には、イラストなどを使って、一目見てわかるような工夫も必要です。


 これらの対応にて、大きな投資を伴わず、新たなターゲットとして、ムスリム、ヴィーガン、ベジタリアンのツーリストなど顧客獲得を目指していただけると考えています。


 飲食業界では、チェーン店が規模の経済性を活かし、大量仕入れ、大店舗での機械化やIT化で効率性を高め、競争が益々激化しています。さらに、インバウンド市場では、中国からのツーリストの減少で、大企業は、韓国、台湾、タイからのツーリスト獲得に動いています。このような状況下、大企業が手を出しにくムスリムとヴィーガン、ベジタリアンへの対応は意外と中小企業向けの取り組みとなりそうです。これらの取り組みにより、安心して日本食を楽しんで頂き、さらに市場拡大が期待できるのではないかと思います。

 

 今回、ムスリム、ヴィーガン、ベジタリアンとしてインバウンド顧客の獲得について説明させて頂きましたが、当法人メンバーは各自の専門分野において、また中小企業診断士として、幅広い経営支援を行っています。経営者様と一つのチームになって改善を進めるBe-Teamに今後とも支援させていただけますようお願いいたします。

 

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