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  • Be-Team コンサルタント

工務店支援(工務店を取り巻く環境について)

更新日:2023年4月11日

 一般社団法人Be-Teamメンバーの筆者は、工務店支援をビジネスフィールドとして定めてきました。診断士協会においても、住宅ビジネスに関する研究会に所属するなど研究や研鑽に勤めています。住宅建築業界は、コロナ感染症、ウッドショックと呼ばれる木材価格の高騰、都市を中心とした地価高騰など、ビジネス環境が大きく変化しています。

 住宅建築業界は中小企業の比率が高く(建設就業者の9割が中小企業)、地元志向の工務店で成り立っています。今回は、この住宅建築業界を取り巻く環境を取り上げてみたいと思います。同業界の方だけでなく、住宅の取得を考えていらっしゃる方にも参考になればと思います。


住宅需要(住宅着工数)の長期トレンドは大幅な落ち込み


 下のグラフのように住宅着工数は昭和62年(1987年)をピークに170万戸から80万戸に半減、工務店の主戦場である持家は50万戸から30万戸程度に減少しています。


国土交通省 令和4年度 住宅経済関連データ 新設住宅着工戸数の推移

 

 さらに下の表では、昨年度の住宅着工数の合計は86万戸で前年微減ですが、持ち家の着工数は、25万戸で前年比10%減、分譲住宅全体では2.5%増、マンションは11万戸で5%増となっています。

 従って、工務店のマーケティング環境は厳しいものと言えます。反して、規模の大きな建築業者が手掛ける分譲住宅やマンションは前年比では増加に転じました。



国土交通省統計を基に作成

原材料価格の大幅な上昇


コロナ感染症の流行から、国際海上輸送の混乱、輸送コストの上昇に始まり、建設を取り巻く原材料の不足や大幅な原材料コストの上昇が起きました。下図の通り、木製品の原価は約2倍になり、金属等にも原材料高が広がりました。また、原材料の不足、入荷延滞により、工程混乱や住宅建設工期の遅延により。建築コスト全体が上昇しました。住宅建築において、施主や取得者への引き渡し価格は施工の数か月前に決定しているので、コスト上昇をカバーできず、赤字になるケースも多く見られました。



日銀統計データベースを基に作成

職人の不足により人件費が大幅に上昇


 建築就業者数は、1997年の685万人から2019年499万人へ、27%減少し、建設現場で必要な職人が集まらない状況で、職人の取合いとなり、手当も上昇しました。さらに、現在の建築就業者のうち35%が55歳以上、29歳以下は10%となっており、高齢化が進んでいます。今後は、高齢者の引退がさらに進み、職人不足が加速、コスト上昇が見込まれています。


コストアップが住宅価格に反映されているのか?


 国土交通省の統計によると、2010年からの住宅価格の上昇は住宅総合で30%、マンションで80%ですが、戸建住宅は20%しか上がっていません。工務店の売上に占める原材料比率を25%として、その価格が2倍になると、そのコストアップ分を吸収することが精いっぱいです(25x2倍+その他75(100-25)=125となり、25%アップとなります)。



 これでは外構等の外注費や自社の人件費の上昇を吸収する余裕がありません。このようなコストアップ構造の中、コロナ禍で疲弊した工務店の経営を立て直すことは非常に難しい状況にあります。

 また、消費者側の視点の立てば、戸建の住宅価格はさらに上昇すると考えたほうが良さそうです。


新たな課題が経営存続を困難にする


 このような環境下、工務店には新たな課題が突き付けられています。一つは、2025年の省エネ基準 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の義務化です。ZEHは、住宅(冷暖房など)で消費するエネルギーを、太陽光発電など創生エネルギーで補うものです。その際には、住宅の断熱性能が厳しく求められます。

 もう一つは、現在認められている、木造4号建物の構造審査特例の廃止です。現在は、木造2階建ては、2級建築士の裁量で構造審査が免除されていますが、2025年からは、この審査が必須になる方向です。

 これら2つの課題解決には、設計部門の強化、建築士の増員など、中小事業者の新たな負担が考えられます。


工務店支援は喫緊のテーマです


 一般社団法人Be-Teamは、このような工務店を取り巻く環境変化において、工務店への経営支援を急ぎ進めるべきと考えています。工務店様、または、その商流の建材卸売業の方々と協力し、2025年問題をクリアすべくお役に立てることを願っています。

(一般社団法人 Be-Team コンサルタント)

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